2009.06.23 Tuesday
関根誠の日記
何年か前、ウィンブルドン近郊の住宅街に滞在した時の事です。ある午後近道をしようと住宅街に入って行ったら、道路の中央に革のジャケットを着たがっしりした体格の黒人男性が立っているのです。ピアスをし、装飾品を多く身に付け、独特のリズムを全身で取り、それとは別に何か口ずさみ、空間に視線を泳がせながら。
道の両脇に車を停車しているイギリスでは、すれ違いに苦労する事が多いのですが、そのうえ真ん中に立ってその有り様、ゆっくり近づく事3m。少し待っても変化なく。しかたなく車を降りて注意しようと思った矢先、遠く反対側の方向からポリスカーが、素早く近づいて来ました。
停車したポリスカー。あたり一帯とても静かでした。運転席側の白人警官は眉ひとつ動かさず、静かに降り、助手席側からは、かなり大柄な白人警官が靴音と同時にスライド式のスチール警棒を鋭い音を立てて振り卸しました。
運転席側から降りた彼は表情一つ変えず、黒人男性に歩みより、道路脇を指差し静かに
一言"Move"・・・・・。
変化なし。
二言目"Move"の声が終わるたいなや黒人男性は見事に道路脇に吹っ飛びました。大柄な警官が彼の腰あたりを勢い良く蹴飛ばした様です。素早く覆い被った大柄な彼と同時に取り押さえに掛かった静かな彼のコンビネーションの素晴らしかった事は言うまでもありません。意味不明な言葉を叫びながら抵抗し続ける黒人男性を取り押さえながらも、我々を誘導する彼の表情には安心感がありました。
日本では決して見る事は出来ないと思われる映画の様な一場面。治安、風紀を乱す者への容赦ない、そして毅然とした態度には少し驚き、また感動してしまったのはなぜでしょう?貴重な体験でしたが、今思えば自分の車のドアを開け様とした時、ポリスカーを遠く耳にした事が幸いだったと反省しています。知識と経験、両方が伴う事の大切さも。
今年はウィンブルドンに滞在しましたが、何事もなく無事な日々を過ごす事が出来ました。